映画『ルノワール』は、早川千絵監督が自分の11歳の記憶や妄想をもとに作り上げた、ちょっと不思議で切ない青春(?)ドラマ。
感情がほとんど表に出ない少女・フキの視点で描かれるのは、父の死、母の不倫、大人たちの不思議な行動、そして自分でもよくわからない衝動的な行動。
このページでは、そんな『ルノワール』についてネタバレありで感想と評価を深掘りしながら、どこが良かったのか、何がモヤッとしたのか、語っていくよ〜!
- ✔ 『ルノワール』の核心テーマと少女の視点の描き方
- ✔ 時代背景とノスタルジーが生む世界観の魅力
- ✔ 映画の評価が分かれる理由と演出のポイント
『ルノワール』の核心:少女フキが見た「死」と「不可解な大人」
映画『ルノワール』は、11歳の少女フキの目を通して、日常に潜む「死」や「大人の奇妙さ」を淡々と描いた作品なの。
物語の中心には、父親の病気と死があって、それをフキがどう受け止めてるのかが全体を通して静かに流れてる感じ。
でも、感情を爆発させるわけでもなく、まるで日記をめくるようなテンポで進んでいくから、ちょっと戸惑う人もいるかも。
父の病と死を通じて描かれる少女の無表情な感受性
フキの父親(演:リリー・フランキー)は、がんで闘病中。最初は自宅療養中だったんだけど、途中で倒れて入院しちゃうんだよね。
でもフキって、その状況に対して感情を大きく動かすわけじゃないの。泣いたり取り乱したりってのがほとんどなくて、すごく淡々としてる。
この無表情さって、単に感情がないってよりも、彼女が「死」ってものをまだ理解しきれてないからだと思う。大人にとっての「死」と、子どもにとっての「死」ってやっぱり違うんだな〜って考えさせられたよ。
大人たちの歪んだ行動に対する無邪気な観察視点
この映画って、不倫・パワハラ・ペドフィリアといった重たいテーマがちらほら顔を出すのよ。
たとえば、母親(演:石田ひかり)は部下にパワハラ疑惑をかけられてセラピー通いだし、そのセラピーの指導員と不倫してて、その不倫相手の奥さんに怒られてたり。
他にも、フキが出会い系伝言ダイヤルで知り合った男性の家に行くシーンとか、ギリギリすぎて見てるこっちがヒヤヒヤ!
でもフキにとっては、それらの出来事が「異常」って意識されてない感じなの。まるで不思議なものを観察してるような目線なのよね。
この、子ども特有の”真っ直ぐすぎる無邪気さ”が、逆に怖く感じる部分でもあるの。

1980年代を舞台に描かれる少女の夏の断片的な冒険
物語の舞台は1980年代後半の日本、ちょうどバブル真っ盛りって時代。
昭和の空気がぷんぷんしてて、VHSとか、伝言ダイヤルとか、ママチャリとか…ノスタルジックなアイテムがいっぱい出てくるのがめちゃくちゃ刺さる!
この時代設定が、フキの一夏の冒険に不思議な浮遊感を与えてて、ちょっと夢みたいな空気があるんだよね。
伝言ダイヤル、超能力、競馬場…多様な体験の数々
フキちゃんの夏は、出会い系に電話したり、超能力にハマったり、競馬場で父親と遊んだりと、ホントに自由奔放。
でもそれって単なる「子どものいたずら」じゃなくて、大人の世界を覗いてみたいっていう好奇心なのかなって思った。
ヨットの上で踊ったり、橋の上で雨に打たれたり、ちょっと幻想的なシーンも多くて、「これ夢?現実?」って思わせるのがうまいんだよね。
日常に潜む危うさと少女の行動の衝動性
正直、フキちゃんの行動って「危なっかしすぎでしょ!?」って思うところが多いのよ。
伝言ダイヤルの男の家に行くとか、他人の家庭に入り込んで不倫の証拠写真を見つけるとか…これはもう衝動というより無防備すぎる。
でもたぶん、そこに込められてるのは「成長」じゃなくて、「成長できなかった少女」っていう切なさなんだと思う。
だから見てて「うわ、やばい…」って不安になるけど、同時に「なんか分かる」って思っちゃうのが不思議だった。

映画表現としての評価:雰囲気重視と構成の課題
『ルノワール』を観ててまず思ったのは、全体がとにかく“雰囲気映画”だな〜ってこと。
映像も綺麗だし、音も抑えめで繊細。だけどそのぶん、物語の輪郭がちょっとボヤけてて、分かりにくいって感じる人も多いかも。
評価は割れるだろうな〜って思うけど、そこがまたこの作品の味なのかも。
ドラマ性を排した構成の是非と視聴者の分かれる評価
この映画、起承転結がほぼないのよ。
日常が断片的に続いていって、たまに「おっ?」って展開はあるけど、すぐまたスッと静かな空気に戻る。
「で、結局なにが言いたかったの?」って思う人もいるだろうけど、それを考える余白ごと楽しむってのが、たぶんこの映画のスタンスなんだと思う。
Filmarksとか映画.comのレビュー見ても、評価が★5の人もいれば★2の人もいてバッサリ真っ二つだったしね。
演出力の進化と鈴木唯の存在感への賛否
主演の鈴木唯ちゃんは、『少年と犬』でも注目されてたんだけど、今回はさらに無表情演技が研ぎ澄まされてて圧巻だった〜!
逆に「演技がなさすぎて無」って言われてる部分もあるけど、それはたぶん、監督の意図的な演出なのかなと。
早川千絵監督自身が子ども時代の記憶を元に作ってるらしくて、リアルな子どもの空気感を大事にしてるんだよね。
あと、映像の美しさとかカットのリズムも『PLAN75』から明らかに進化してて、「これもう次作めっちゃ期待していいのでは…?」って思っちゃった。

象徴としての「ルノワール」というタイトルの意味
正直、「なんでタイトルがルノワール?」って思った人、絶対多いはず!
映画観ても直接的な説明はほとんどなくて、最後までふわっとしてるのが逆に気になるんよね。
でも、観終わってからいろいろ調べたり考えたりすると、このタイトルもちゃんと意味があるってわかってきて、ちょっと感動した。
芸術的意図と監督の個人的記憶の融合
ルノワール=フランスの画家だけど、映画に直接登場するわけじゃないの。
ただ、作品全体が絵画みたいな質感で、構図や色使いがまるで1枚の絵を観てるみたいに繊細。
早川監督が「イレーヌ嬢の肖像」を参考にしたって噂もあるし、少女の一瞬の表情や空気感を切り取るっていう意味では、たしかにルノワール的だな〜って思った!
夢か現実か曖昧な描写に込められた意味の読み解き
『ルノワール』には、夢なのか現実なのかわからないシーンがたくさんあるの。
例えば、冒頭でフキが殺される夢(作文)、ヨットで踊る場面、馬に向かって鳴きまねするシーン…現実感は薄いけど、どこか心に残る。
これはきっと、子どもの頃の記憶って曖昧で夢みたいだったっていう感覚を表現してるんだろうな。
だからこそ、映画の全体がモザイクみたいにバラバラでも、それがかえってリアルに感じるんだよね〜。

映画 ルノワール ネタバレ 感想 評価のまとめ
というわけで、『ルノワール』は好き嫌いがはっきり分かれる映画だったけど、私は結構ハマっちゃった。
ハッキリしたメッセージがあるわけじゃないけど、少女の目に映る世界の美しさと怖さを、ぼんやりとでも感じられたなら、それで充分な気がする。
人によって読み取れるものが違う、そんな“観る人を試す”ような映画でした!
断片的な少女の視点が浮かび上がらせる世界の真実
大人から見ればただの「変な行動」も、フキにとっては全部が意味のある出来事だったのかも。
彼女の見ていたもの、感じていたものを、私たち観客がどう受け取るかってことが問われてる気がした。
「死」と向き合うことで見えてくる成長と喪失の輪郭
父の死、周囲の大人の不完全さ、そして自分の未熟さ。
それら全部が、フキのひと夏の記憶として刻まれていくんだよね。
成長とは言い切れないけど、何かを「知ってしまった」少女の顔は、確かに前とは違って見えた。


- ★ 少女フキの視点で描かれる“死”と大人の不可解さ
- ★ バブル期の日本を舞台にしたひと夏の断片的体験
- ★ 雰囲気重視の作風と評価が分かれる理由を考察
- ★ タイトル「ルノワール」に込められた芸術的意味
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